だらだら憩

映画観た、本読んだ、これ食べた、これ買ったみたいなことを肩肘張らず書いているブログです

劇団青年座『金閣炎上』を観た 新宿 紀伊国屋ホールにて

当記事にはアフィリエイト広告が表示されていますが真心込めて書いています。

こんにちは、憩です。

 

紀伊国屋ホールで5月12日(金)~5月21日(日)の期間で上演中の

劇団青年座さんの『金閣炎上』を観ました。

 

あらすじ

大正14年、若狭湾に面した寒村の成生に若い女がやって来た。
西徳寺の住職道源のもとに嫁入りする志満子である。
この辺境の末寺で結核に病む道源と結婚生活が始まった。
昭和4年、養賢が生まれる。
しかし成長するにつれて養賢には重度の吃音症があらわれる。
「貧寺の子が生き残るためには僧侶になるしかない…」
そう考えた父は養賢を金閣寺に入れたいと強く願う。
昭和18年、父の死から一年後、養賢は金閣寺で得度式をあげ見習い僧となる。
しかし父から受け継いだ肺病症状が現れ、母の待つ故郷で養生することになった。
昭和20年、戦争は終わった。
成生から京都に戻ってきた養賢が見たものは…

作者・水上勉氏が自らの実体験と重ね合わせて描いた名作小説を作者自身が戯曲化。
四〇年の時を超えて、青年座に新たな『金閣炎上』が誕生する。

(劇団青年座様公式HPより引用)

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1950年に発生した金閣寺放火事件を題材とした水上勉氏の小説『金閣炎上』が題材なわけですが、

不勉強なため知らなかった……。

この金閣寺放火事件をモチーフにした作品である三島由紀夫の『金閣寺』は何度もチャレンジして完走してないんですが

三島氏のはフィクションを入り混じって書いてるのに比べて

『金閣炎上』のほうは、史実に忠実かつ、禅僧を志した水上氏の経験も入り混じったもののようです。(現状、原作未読なので調べた情報だけで書いています……)

 

 

舞台の感想を書きます。

上演中の舞台なのでネタバレを回避のワンクッション置きますね。

感想読まないよって方はここまで読んでくれてありがとう。またね。

 

本当にいい舞台だった。

お近くのみなさん、興味のある方はぜひチェックしてみてください。

 

 

 

それでは感想へ、GO!

 

 

 

 

感想

観劇後に事件に関する情報を少し読んだのですが

三島氏のほうはかなり三島氏独自の解釈が加わっているのに対し、

こちらはかなり史実に忠実だったのだろうなという印象を受けました。

 

一幕は養賢(承賢)の父母の出会い、養賢の人格形成について描かれ、

二幕は金閣寺で見習い僧になった承賢がどのような過程を経て金閣寺を放火するに至ったかというのが丁寧に描かれていました。

上演時間は休憩ありましたが、2時間40分で、

一幕がたしか55分、

二幕が1時間45分なのですが特に二幕は長さを感じなかった。

 

宮田慶子さんの演出作品を観るのは実は二回目なのですが

奇を衒った解釈を入れず、

(たぶん)原作に忠実に、そして原作を爆発させるような演出をされる方という印象を持っています。

 

チケット代安すぎん……??

 

役者の方々の演技が本当に素晴らしかった。

一人で何役もされている方がいて、どこ行っちゃったの?! って思う人もいた。

最後のカーテンコールでお父さんいないじゃん! って思ったらお医者さんになってた、、、、、

 

三島氏のほうって金閣寺の美しさにとりつかれた学僧の話で(父から美しいと聞かされていた金閣寺を実際見たら全然美しくなくてがっかりするくだりはおもしろくて何度読んでも笑う)(完走してないけど)

『金閣炎上』のほうは、

拝金主義の金閣寺は寺や仏教のありかたに反するものだから燃やしてしまえという考えになって燃やしたというのは腑に落ちました。

原作を読んでいないのであくまで舞台『金閣炎上』での養賢の印象になるのですが、

禅僧である父が亡くなってもまだ寺に居座る母に「禅宗としてはありえない」と叱責するシーンがあったことからも、

仏教とは、禅とはこうあるべきみたいな考えがかなり強かったんだと思います。

以前禅僧の方が書いたミニマリズムの本読んだけど、かなり禅は質素にストイックに生きることを求められていて大変だなーと思ってしまった……。

 

金閣寺が戦争で燃やされなかったがゆえに

金閣寺への神格化が進み(寺なのに)

外国人含む参拝客が増え、

寺はどんどん潤っていくのに僧侶たちへの待遇はよくならず、

自分の贅沢を棚に上げて叱ってきた長老に対しては何も言わず声を上げているシーンをみて「ここで会話ができていたら結末は違ったんだろうなぁ」と思ってしまった。

 

真面目な人ほど失望して、独自の思想を熟成させて犯罪行為に走ってしまうことは

奇しくもよくあることですが

養賢の生い立ちを考えるとほんとうに居た堪れない……。

 

養賢が六仏と喧嘩しながら火をつけるシーンは圧巻だった。

笑いながら逃げていくタイプの犯人じゃなくて

放火した後、その火に飛び込まず、山で自殺したあたり仏教への思い入れを感じた。

 

志満子さん(養賢の母)も嫁いだときから「こんなはずじゃなかった」ってずっと思ったんだなっていうのを凄く感じました。

養賢のことを愛しているように見えたのは、やっぱり可能性のある子どもだったからなのか、ほんとうに愛していたのかそこまではわかりませんでしたが(面会で差し入れを持ってこなかったのは精神的に錯乱してたからで、そこで愛情をはかるのは難しかった)

志満子には志満子のストーリーがあって、

彼女の自己実現が養賢を苦しめていることに気づいて欲しかったとわたしは思いました。

 

原作読んでみようと思います。

劇団青年座さんの舞台はまた行ってみたい。

 

ここまで読んでくれてありがとう。またね。

おわり